口腔外科とは、むし歯や歯周病の治療以外で、顎や口の中の病気について外科的な治療を行う診療科です。一般的には親知らずの抜歯が口腔外科の手術として知られていますが、他にも粘膜疾患や小帯(唇と歯ぐきのつなぎ目にあるスジ)の切除治療、副鼻腔にある炎症の治療なども行っています。
歯科治療と密接に関わる口腔内の疾患に対応できることが、当院が選ばれる理由でもあります。実際に、歯が痛いという理由で診療を受けた際に、歯科治療の中で見つかることも多いのです。予防歯科の検診で、患者さまからの相談を受けて発見することもあります。
当院では院長、副院長ともに口腔外科専門病院での10年以上の経験があり、副院長は日本口腔外科学会認定医(現:専門医)取得歴もあります。難しい症例でも対応していますのでご相談ください。一般外来診療での対応が困難な場合は、地域の拠点病院と連携していますので、そちらにご紹介いたします。
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口腔外科
親知らずの抜歯
状況に応じて最善の判断が必要です
全ての親知らずを抜く必要はありません。しかし、埋まっている場所が腫れたり、痛んだりすることを繰り返すようであれば抜く必要があります。また、手前の歯の歯周病が進む、深い場所にむし歯ができるという場合は、親知らずの調子が悪くなくても、予防的処置として抜くことをおすすめすることがあります。
- 左のレントゲン写真は傾いた親知らずと手前の歯の接点がむし歯になってしまいました。傾いた状態の親知らずは、磨き残しなどむし歯になる可能性を高めます。
歯を抜くことに抵抗のある方がいるのは事実ですが、健康なお口を守るための大事な判断です。私たちは患者さまに最善の治療を行っておりますので、心配なことは何でもご相談ください。
歯の移植
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自分の歯を活かす治療方法です
歯の移植とは自分自身の歯を移植する治療で、保険診療が認められる場合もある一般的な方法のひとつです。
親知らずを移植することが多く、義歯やインプラントが不要になる場合もあり、患者さまの負担が少なくなります。また、何らかの治療のために自身の歯を一旦抜いて、治療後に植え直すことを再植と言います。
メリット
- 抜歯した両隣の歯を削らなくて済む
- 歯根膜(顎骨に歯を留めておく靭帯のような組織)が大きければ、インプラントよりも安定する
- 自身の歯のため、異物反応が起こらない
- 4~5カ月で安定し、自分の歯として噛むことができる
- 一部健康保険適用が可能
デメリット
- 自身にドナー歯があることが前提(他人の歯の移植は行いません)
- 術後4カ月以上は経過観察の必要あり
- ドナー歯や移植先の状況により、うまくいくとは限らない
移植治療について
治療の流れ
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- むし歯で抜歯する他に選択肢が無い場合など「歯が使えない」という条件が必要です。また、移植用の歯は、親知らずや埋伏歯(機能せず骨の中に埋まっている歯・過剰歯も含む)などがドナー歯として使用されます。
※患者さまがドナー歯を持っていることが第一条件になります。
- むし歯で抜歯する他に選択肢が無い場合など「歯が使えない」という条件が必要です。また、移植用の歯は、親知らずや埋伏歯(機能せず骨の中に埋まっている歯・過剰歯も含む)などがドナー歯として使用されます。
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- むし歯で抜歯する他に選択肢がない歯や、神経までむし歯に侵されて復元することが難しい歯を抜歯します。
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- 抜歯したところに親知らずを移植します。
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- 移植が終わると、歯の噛み合わせを調整して治療完了です。歯を支える骨と歯ぐきの状況がしっかり安定するまで4〜5ヵ月くらいかかります。
その間、定期的に通院していただくことが必要です。
- 移植が終わると、歯の噛み合わせを調整して治療完了です。歯を支える骨と歯ぐきの状況がしっかり安定するまで4〜5ヵ月くらいかかります。
保険が適用される場合
移植する歯は親知らずに限り、当日に移植した場合。
※親知らずの手前の歯を抜いた時に親知らずを移植すると保険が適用されます。
※その他の条件による移植は、当院の医師までご相談ください。
※親知らずの手前の歯を抜いた時に親知らずを移植すると保険が適用されます。
※その他の条件による移植は、当院の医師までご相談ください。
症例
- 黄色の×印の歯は、歯冠部分がほぼ無い状況になってしまい、このままでは十分な補綴が
できないため抜歯を行い、赤色の×印の親知らずを移植する治療を行いました。ただし、どの部位でもこの処置ができるとは限りません。条件が合うことに加えて、
この治療が最善と考える根拠に基づいて治療を検討することになります。 -
再植治療について
一番後ろの歯を残すことは、その後の治療にとって大事なことです。
当院では、口腔外科の視点でも治療をイメージし、患者さまに安心を提供いたします。
当院では、口腔外科の視点でも治療をイメージし、患者さまに安心を提供いたします。
治療の流れ
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- 治療した歯の根よりも奥に親知らずがあります。
親知らずを大きな、のう胞(ふくらみ)が包み込んでいます。
- 治療した歯の根よりも奥に親知らずがあります。
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- 手前にある歯を抜き、のう胞と親知らずを摘出します。
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- 抜いた歯を戻して固定します。
のう胞が分厚かったため腫瘍性病変を懸念して病理検査を行いましたが、安心できる結果でした。
- 抜いた歯を戻して固定します。
顎関節症
- 左右の耳の前にある顎の関節で、ジャリジャリ、カックン、パッキンという音が出たり、大きな口を開けると顎の関節に痛みを感じることがあります。ひどくなると耳の下や顎の下、首の筋肉が痛くなり、大きな口を開けることもできなくなります。薬の投与と開口運動で半数以上の方が良くなりますが、改善しない場合はマウスピースをはめて就寝していただきます。
症状が出てから早期に治療を始めることが重要ですが、全ての顎関節症が重症化するわけではありません。音だけの場合、自然治癒する場合もあります。原因はストレス・過労、受験や会社など環境の変化と言われています。
治療方法
まずは痛みを和らげることから始めます。
また、ストレスによる発症を取り除くためのお話もさせていただきます。仕事や家事など、様々なストレス要因があるのが現代社会です。改善しない場合は、色々な可能性を探りながら最善の治療を提案いたします。
また、ストレスによる発症を取り除くためのお話もさせていただきます。仕事や家事など、様々なストレス要因があるのが現代社会です。改善しない場合は、色々な可能性を探りながら最善の治療を提案いたします。
副鼻腔炎
- 鼻の両側の上にある上顎洞と呼ばれる副鼻腔が炎症を起こして、目の下や頬骨の下に違和感があり重苦しさを感じます。鼻か歯のいずれかが原因で、歯に原因がある場合は歯科治療で治ります。
また、20~30年前に耳鼻科で受けた手術後に起こる副鼻腔炎もあります。ご質問など御座いましたらお気軽にお声かけください。
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A
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B
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- 右の頬の痛みを訴えて来院された患者様のCT写真です。A.Bはその際の同じ部位を異なる断面から撮影したものです。写真内の1は右の副鼻腔、2は鼻腔です。奥歯の根の先端におおきな病変があり、副鼻腔の下方の骨を破壊し、3の矢印はその部位を示しています。
病変の影響で副鼻腔の中は浸出液で満たされています。右の頬の痛みはこの副鼻腔炎が原因だと考えられました。また副鼻腔炎の原因と考えられる奥歯は、根の先の病変が大きく、動揺もあったことから抜歯を行い、その後この患者様の頬の痛みはなくなりました。
この様に歯が原因の副鼻腔炎を「歯原性副鼻腔炎」と呼び、原因となっている歯を治療することにより副鼻腔炎は治ります。
副鼻腔炎の症状
- 歯の痛みと頬の痛み・違和感
- 鼻水が喉の奥に溜る
- コンクリートの上を歩いたりすると頬にひびく
治療方法
副鼻腔炎の治療は、手術することなく薬による治療が可能です。
抗生物質を服用することで、原因となる感染を抑え、炎症を取り除きます。
抗生物質を服用することで、原因となる感染を抑え、炎症を取り除きます。
粘膜の病気
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お口の中は様々な細菌が存在します
お口の粘膜は非常に繊細で、少しのきっかけで病気にかかったり、傷つくことがあります。ウイルス性や腫瘍性の病気から、単なる傷まで様々で、ウイルス性の代表であるヘルペス、粘膜が白くなる白板症などがあります。
この白板症は前癌病変といって一部が癌化することもあります。ほとんどは心配ありませんが、注意深い観察は必要です。口の中の癌の大部分は、舌や頬の口腔粘膜にできます。いつまでも治らない傷やしこりが気になる場合は、早めにご相談ください。
症例
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お口の中は様々な細菌が存在します
腔内の粘膜にできる病気の中に口内炎があります。
その中で最も多いのがアフター性口内炎と呼ばれる痛みを伴う口内炎です。口腔内のあらゆる粘膜に発症し直径1ミリ~10ミリ程度の類円形の境界明瞭な比較的浅い潰瘍で、潰瘍面は灰白色の偽膜に覆われています。アフター性口内炎にはアフターが1個で非再発性のものと、アフターが1~多数個で数日から数か月の間隔で定期的あるいは不定期的に再発を繰り返すものがあり、後者は治療が難しくなります。また、ベーチェット病の口腔内症状としてアフター性口内炎が併発することがあり、その他にも色々な口内炎があり鑑別診断が必要です。
治療方法
不潔な口腔内には口内炎ができやすく、また治るまでに時間がかかりますので、まず最初に口腔内を清潔にします。そしてうがい薬とステロイドが入った軟膏で症状を軽くしたり、治すことができます。
しかし再発性のアフターは内服薬の服用が必要となりますが、保険で使える薬がほとんどないため保険の適用外の飲み薬を使う場合があります。
しかし再発性のアフターは内服薬の服用が必要となりますが、保険で使える薬がほとんどないため保険の適用外の飲み薬を使う場合があります。
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症例扁平苔鮮
頬の粘膜に出来た扁平苔鮮と言う粘膜疾患です。
レース模様が特徴で違和感や痛みで気が付く事があります。原因はストレスやウイルス、細菌感染とも言われますが複合的要素の強い難治性の病気です。使える薬があまり多くありませんが、癌との鑑別診断が必要です。
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症例血小板減少性紫斑病
口腔の複数の部位に出血を伴う紫斑が出来る病気で、この患者さんの場合は、舌、歯肉、頬の粘膜からの出血で来院されました。この病気は口腔粘膜の病気ではなく、血小板減少性紫斑病と言う血液中の血小板が少なくなって起こる病気です。直ちに血液内科に送り、緊急入院となりました。
治療方法
ウイルス性の場合は薬で治療することができます。
しこり、傷などどうしても外科的な手術が必要な場合もあります。
しこり、傷などどうしても外科的な手術が必要な場合もあります。
外傷
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お口の中を傷つける原因は様々です
事故はもちろん、スポーツや学校生活など日常生活には様々な危険が潜んでいます。口の中が傷ついた場合、当院では口腔外科として外傷の治療を行い、美しく戻るよう最善を尽くします。
例えば、学校生活で前歯が折れてしまった場合、そのカケラは必ずとっておいてください。接着剤が進歩し、かなり目立たないように元に戻すことができます。泥で汚れてしまった場合は、学校にある歯の保存液か牛乳の中に入れて持ってきてください。大切なのは使えるかどうかを現場で判断しないことです。歯の欠片や抜けてしまった歯を元に戻して固定し、必要であれば神経を治療してできる限りの処置を行います。
症例
- 転倒して前歯を折り、下唇に傷が出来ました。
前歯の半分が折れており神経が露出していましたので、神経を保護する薬を塗り、幸い折れた歯を持参されましたのでその半分を接着剤で修復しました。
下唇には複雑で少し深い傷がありましたので髪の毛より細いナイロン糸で縫合しました。 -
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受傷時の口腔内
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受傷1カ月の歯と唇
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その他
お鼻の下や横を押さえると痛い
上の前歯の根の先に病気ができると、顔を洗うときに手が触れて違和感があったり、押さえて痛みが出る場合があります。歯の根の病気は年単位で徐々に大きくなることが多く、全く自覚症状がないままレントゲン写真で見つかることもよくありますのでお悩みの方は一度ご相談ください。
症例
- 丸で囲んでいるところが病巣で、周りの色と違い、少し黒く抜けている様に見えます。
歯の根の部分で細菌による炎症が発生し、膿が溜まっている状態です。
治療方法
副鼻腔炎の治療は、手術することなく薬による治療が可能です。
抗生物質を服用することで、原因となる感染を抑え、炎症を取り除きます。
抗生物質を服用することで、原因となる感染を抑え、炎症を取り除きます。
上唇の内側や舌の下にスジがある
上唇の内側や舌の下にあるスジのような部位を小帯と呼びます。
この小帯は誰にでもありますが、小帯の付く位置が異常だったり、太くて強すぎる場合は問題となることがあります。
この小帯は誰にでもありますが、小帯の付く位置が異常だったり、太くて強すぎる場合は問題となることがあります。
症例
- お子さまの場合、上くちびるの小帯は真ん中の歯に隙間をつくり、成長してもすきっ歯となることがあります。また、舌の下の小帯が強すぎる場合、乳児期のミルクを飲む量が少ない、放置しておいて舌足らずの話し方になるという影響があります。
治療方法
上記のような場合、小帯を切り取る必要があります。
ミルク飲みに影響があると思われる場合の治療は生後数カ月の乳児のみが対象です。いずれの小帯も局所麻酔で2~3分で治療完了します。最近は、新生児のときに産科で小帯の異常を指摘されることがあります。その場合も手術が必要かどうか、いつ手術したらいいのかなどご相談ください。
ミルク飲みに影響があると思われる場合の治療は生後数カ月の乳児のみが対象です。いずれの小帯も局所麻酔で2~3分で治療完了します。最近は、新生児のときに産科で小帯の異常を指摘されることがあります。その場合も手術が必要かどうか、いつ手術したらいいのかなどご相談ください。
下唇に水泡ができた
水泡は下唇にできることが多いですが、舌の裏側や粘膜にできることもあります。噛むとつぶれますが、また大きくなります。唇や舌の裏側にある唾液を作る組織から延びる管が詰まったり、傷つけられることが原因です。
悪い病気ではないため急ぐ必要はありませんが、放置すると大きくなって手術が難しくなることがあります。
悪い病気ではないため急ぐ必要はありませんが、放置すると大きくなって手術が難しくなることがあります。
治療方法
この水泡は内側に薄い膜があります。メスで切開しても再発してしまうので、薄い膜でできたのう胞とその周囲にある米粒のような小唾液腺を切除します。細かくデリケートな処置のため、顕微鏡を使用します。水泡が小さくつぶれているときは様子をみて、大きく腫れたときが手術するタイミングです。